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なぜ多言語サイトの9割は失敗するのか?

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この記事の筆者:三好アキ


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日本と海外のウェブサイトの違い

monoteinでは、海外のクライアントからウェブサイト制作の依頼を受けることが多々あります。

また、日本の方から英語版のホームページ制作を受けることもあります。

そのため海外のウェブサイト、特に英語圏のウェブサイトを目にする機会が多いのですが、日本語と英語のウェブサイトには多くの違いがあることに気がつきます

英語版ウェブサイトを作る時にこの違いを意識していないと、ホームページの文章を日本語から英語に訳しただけの翻訳サイトになってしまうので注意が必要です。

今回は、日本語と英語のウェブサイトの違いを紹介します。

日本のウェブサイトは日本の街並みを反映している?

日本語のウェブサイトには次のような特徴があり、全体として「ごちゃごちゃ」した印象を与えるものが多くあります。


• 文字が隙間なく詰め込まれている

• 線によって無数のコラムに区分けされている

• 赤や黄色など目立つ色が多く使われている


世界のウェブデザインの近年のトレンドは"Simplicity"なので、より一層これら日本語のウェブサイトの特徴的な点が目立ちます。

このような日本のウェブサイトの特徴を考えると、私はいつも日本の街並みを連想します。

私はヨーロッパの国々に行くことが多いのですが、日本に帰ってくるたびに特徴的だと思うのが、街に所狭しと設置された看板と広告です。

これは「国土が狭いので、小さなスペースもできるだけ活用する必要がある」という現実的要請に基づくものだとも考えられますが、それが節操なく行われ、結果として乱雑な印象を与えてしまうというのは、必ずしも日本的な現象というより、広くアジア圏全般にみられる現象にも思えます。

しかし実際のところ、「狭いスペースに多くのものを詰め込む」という特徴は、現実的要請(=土地の狭さ)に基づいて生まれたものというよりかは、むしろ日本人の性格に元々埋め込まれていたものだと私は見ています。

例えば駅や公園の標識や掲示物を見ると、余白は許さないかのごとく、注意書きの文字が隅の隅まで並んでいます。

「龍安寺庭園に代表される余白の文化が日本の特徴の一つ」と考える向きは強いですが、あのような意匠は、むしろ日本人には余白の文化がそもそもなく、そのような流れに逆らって作られた例外的存在のために後世に歴史に名を残した、と考えることもできます。

このような考えを裏書きするのが日本のウェブサイトのデザインです。

インターネットに空間の制限はないにもかかわらず、依然として日本語のウェブサイトの多くは、余白を恐怖するかのように文字や画像で塗りつぶしています。

このような話でよく例に出されるのが日本最大のECショップ、楽天のウェブサイトで、今はややスタイリッシュになったものの、数年前までは故意にしているのかと疑ってしまうほど乱雑な見た目でした。

しかし、当時も今も英語版の楽天のウェブサイトはスッキリとしたデザインで作られており、日本版の乱雑なデザインとは対照的なので、乱雑なデザインこそ日本人には広く受け入れられるものであるという一つの証拠を提供してくれます。

シンプルな英語のウェブサイト

海外のウェブサイトは、日本語のウェブサイトとは逆に、スペースが大きく、文字情報が少ない特徴があります。

また、文字による説明の代わりにアイコンが使用されているケースが多く、文字依存が低いのも特徴的です。

レイアウトの特徴としては、全体として中央揃えが多く、左右に余白を取るケースがよくあります。

そのため全体としての情報量が抑えられ、シンプルな印象をあたえるものとなっているのです。

文字の多い日本語のウェブサイト

上で触れたように、文字依存が高いのが日本のウェブサイトの特徴です。

ここには日本人の精密さへの欲求、翻って神経質な性格が表れているように思えます。

例えば画像による情報伝達は、見る人によって得られる情報が大きく異なります。

つまり、受け手の解釈の幅が広い伝達手段です。

一方で、文字を使った情報の伝達は、双方に同等の言語能力があることを前提とするものの、伝える情報を明確に表すことができ、画像よりも高いレベルで同じ認識を共有できるメリットがあります。

これは受け手の解釈の幅が狭められる分、強迫的であるともいえますが、日本人にはこのような「できるだけ限り正確な情報伝達」を好む神経質な性格があるといえそうです。

それはまた「事後に何らかのクレームが提起された時のために、事前にできるだけ明確な形で説明責任を果たして受け手の解釈の幅を狭め、将来の保険を得る」という日本人のリスクを避ける態度が表れているともいえるかもしれません。

もちろんここには、発信側の都合だけでなく、受け手側のユーザーにとっても「できるだけ多くの情報を事前に得て安心したい」というリスク回避の気持ちがあることは否定できません。

文字情報が増える理由

日本のウェブサイトに文字情報が多い理由の中には、上述のような日本人の性格や気質に由来するものの他に、日本語それ自体に内在する理由もあります。

現代の日本語ではひらがな、カタカナ、漢字とともに、英語も頻繁に使われます。

文字の種類が4種類もあることは大きな特徴ですが、さらにそれを縦書きでも横書きでも書ける高い柔軟性も特徴的です。

これらはそれだけ選べる選択肢が多いことを意味し、何かを表現する時に「カタカナだけ」「漢字だけ」「英語と一緒に」というバリエーションの他に、縦書きも横書きも選択できてしまう自由度の高さも、文字情報が増えてしまう一因だと思います。

変化のきざし

このように「More is better」「多ければ多いほど良い」という特徴のある日本のウェブサイトのデザインにも、近年は小さな変化が見られるようになってきました。

まだ数は少ないとはいえ、いくつかのスタートアップ企業のウェブサイトでは、文字依存を減らして余白を多目にとり、写真やイラストを適度に配置することで、ユーザーに想像の余地を与えるデザインとなっています。

海外のユーザーが見る日本語のウェブサイト

日本のウェブサイトは海外とはまったく異なるテイストで作られているため、日本語のウェブサイトの英語版を作る時、デザインはそのままで文章だけを英語に翻訳すると、文字情報が多すぎて海外ユーザーには読みにくいウェブサイトになってしまいます。

英語のウェブサイト作成には、海外で受けいれられるテイストを意識しながら、見た目と載せるコンテンツを根本的に考え直す必要があるので注意が必要です。

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